猫が攻撃してくる…考えられる3つの理由【動物行動学専門医 入交先生に聞く!】

By 入交 眞巳先生(獣医師) 2022/10/24
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猫との生活をもっと幸せに送るために。
今回の猫壱よみものは、獣医師で米国獣医行動学専門医であり、そして猫愛にあふれる入交先生に、ご寄稿いただきました。

猫との生活を送る上での知識や、解決策のヒントがたっぷり詰まっていると思います。
「猫が幸せ、私も幸せ」な毎日の実現に、お力添えできますように…。


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SNSなどでいろいろな写真を見ていたら、かわいい猫の写真が出てきて、思わず微笑んでしまった、という方は多いと思います。
猫の動画や写真は癒し効果がありますよね。
しかし、そんな可愛い「猫の違う一面」に心を痛めているご家族もたくさんいらっしゃいます。

 猫は時に、ご家族に対して攻撃的になることがあります
猫のそばに近づくと唸ったり、変な声で鳴き、急に飛びついてきたり、噛みついてきたり、引っ掻いてきたり。
猫の場合、襲う時は3Dでどこからでも飛んでくることができますし、武器も口と鋭い爪があるので、いきなり飛びかかってくると恐怖すら感じることがあるでしょう。
実際に猫さんに攻撃されたご経験のあるご家族はとても怖いご経験をされています。
「家に入るのが怖い」「猫の顔を見ると恐怖を感じることがある」「猫のことは大好きだけれど、近くに来るとやられるのではないかと身構える」というコメントをお聞きしたこともあります。
 


 さて、猫はなぜ愛するご家族を急に攻撃するようなことがあるのでしょうか?
「猫の攻撃性」には、様々な理由が隠れています。

今回は考えられる3つの理由をご紹介します。
 

①内分泌疾患(ホルモンの病気)を含む体の不具合から → かかりつけの動物病院で相談を

 猫がもしご家族に対して攻撃的になってしまった場合は、なぜ攻撃行動が発現しているのかを考えていきます。
最初に、身体の問題から攻撃している可能性があることを忘れてはいけません。

脳の機能に影響がある内分泌(ホルモン)の病気で攻撃行動が出る場合があります。
甲状腺機能亢進症、副腎皮質機能亢進症、糖尿病などです。
また、内分泌疾患がなかったとしても体調不良でイライラしていて攻撃的になる場合もあります。
 


もし愛猫が何だかイライラして、人につっかかってくるなと思われたら、かかりつけの動物病院にまずはご相談ください。
そして必要な診察を受けて下さい。
疼痛があって、抱っこされた時に、痛くてそこから攻撃的になっている場合もあります。
詳しく診ていただいてください。
 

②ご家族に遊んでほしい → 頭を使った遊びを

 特に身体に問題はないようであれば、次に行動を詳しく見ていきます。
まずはよくあるのは遊び誘発性の攻撃行動です。
猫は遊びたくて人に飛びかかってきますが、飛びかかられた人は「攻撃を受けた!」と思っている状態です。
猫も遊びが大好きな動物です。特に大好きなご家族にかまってもらいたくて、飛びついてきている可能性もあります。
この問題は多くの場合は若い猫に多いかと思います。

原因は退屈な気持ちからかと思います。
猫もあそびが大好きなので、退屈していたり、ご家族が十分に遊んでくれなかったり、関心を求めたかったりすると、自ら「あそぼ~💗」と飛んできてしまうわけです。
 

 遊びからの攻撃行動に対しては、猫じゃらしや釣り具の先に羽のついたようなおもちゃや、ボールなど転がすおもちゃなどで遊んでいただく、「知育トイ」と言われるパズルフィーダー(おやつをおもちゃの中に隠して工夫をしておやつを出しながら遊ぶおもちゃ)などで一人遊びをさせたり、鬼ごっこやかくれんぼで一緒に遊んであげましょう

頭を使わせることで落ち着く可能性もあります。
猫もトレーニングができますので、色々な技をおしえてあげてもよいでしょう。
方法は犬のトレーニングと一緒でフードを使って教えます。
猫のアジリティ(障害物競走みたいな競技)トレーニングもできます。
トンネルをくぐったり、ハードルを飛び越えたりする競技ですが、おうちの中でいろいろな障害物を作って飛んだりくぐらせたりして遊ぶのもよいでしょう。
 

③心の問題 → 動物の精神科医「行動診療科」で相談する、お薬を活用する


 遊び誘発性の攻撃行動には見えず、「しゃー」「うー」と言って人のことを睨んでいて、少し近くに行くと飛んできて攻撃してくる、人の動きを阻止して部屋から出られないくらい狙ってくる、猫に襲われるので動けない、部屋から出られない、猫に監禁されているような状態、など緊迫した攻撃行動もあります。

これらは恐らく、猫が何らかの恐怖や葛藤性の混乱をご家族に対して持っていて、攻撃行動に繋がっている可能性があります。

例えば、何らかの恐怖を味わった後、その恐怖を感じた時に、そばにいた人と恐怖が結びついてその人を見ただけで、過度な攻撃行動をその人に向けることで、自分の安全を守ろうとするような行動になります。
普通ではない状態と思いますが、恐らくこのような緊迫した過度の攻撃をする猫は、脳内の感情をコントロールする「セロトニン」というホルモンの枯渇があったり、何らかの脳の機能異常が起こっていたりする可能性があります。
 


動物病院にご相談いただくことで脳内のセロトニンを調整して脳の機能を改善するようなお薬もありますし、そのような猫に対しての行動修正と言って、人の心療内科でも行うような「認知行動療法」に似たものを使って治療ができます。

近隣のホームドクターがこのような攻撃行動に対して詳しくない場合は、動物の精神科医である「行動診療科」で特殊診療をしている獣医師もいますので、ホームドクターに専門の獣医師を紹介していただけたらよいかと思います。
 


 治療を待っている間、ご家族の安全を確保していただくことが大切です。
猫のケージをご用意いただいて、中に入っていてもらったり、部屋を1つ猫専用にしてそこにいてもらって、最低限のお世話だけするようにしたりして、お互いにクールダウンします。
動物病院に連れていく際には、キャリーに入れることが必要になるので、キャリーにおやつで入っていける練習(キャリーにおやつを入れて出入りさせる)はしておくとよいでしょう。
また不安を下げるお薬もあるので、動物病院に事前に相談されてお薬を最初にもらっておいて飲ませてから連れていくことも考えられると思います。

 猫が攻撃してくるためにおうちに入れなくなる、なんてなかなか友人に話しても信じてもらえなかったりしますが、実際にその状態になると本当に怖いと思います。
まずは遠慮なくホームドクターにご相談いただき、必要なら、専門の行動診療科の獣医師にも相談ができるんだ、と知っておいていただけると気持ちが楽になるのではないでしょうか。
 

入交眞巳先生 プロフィール

どうぶつの総合病院 行動診療科 主任
(獣医師・獣医学博士)
米国獣医行動学専門医(ACVB)、学術博士
東京農工大学 動物医療センター 特任講師

著書:猫が幸せならばそれでいい:猫好き獣医さんが猫目線で考えた「愛猫バイブル」

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