なんとなくいつも無表情に見える愛猫。群れで行動する犬に比べて、単独で生活する猫は表情筋が発達しなかったからだと言われています。
見た目と気持ちは比例すると思っていましたが、実は動物によって感情の温度差があるようです。
動物学者の説によれば、野生動物には「悲しい」という感情はなく、「悲しくて泣く」という行為は人間特有の感情なのだとか。
『うちの猫の気持ちがわかる本』という本の監修をされた今泉先生によると、
「猫に悲しい、寂しいという感情があるとすれば、子猫時代に感じる『お母さんと離れると寂しい』『兄弟とくっついていないと寂しい』という思いだけでしょう。」
と語っています。
よく猫がおやつをねだるときの寂しそうな
「にゃ~ん…」
という鳴き声は、猫にとっては「要求」の声。しかし、飼い主が聞くと「おやつがもらえなくて悲しんでいる鳴き声」と勝手に解釈して聞こえてしまうのだとか。
う~ん、でも一緒に暮らすと分かりますが、猫は確かに悲しそうな表情をしますよね。猫が悲しそうに見えるときは、それでは何を考えているのでしょうか?
■子猫や同居している猫や飼い主が亡くなったときの気持ちは?
動物は「死」という概念を持たないため、死ぬことを恐れたり、悲しむことはないといいます。しかし子猫や同居している猫や飼い主が亡くなったとき、いきなりの
「環境の変化」
には大変敏感です。「いつもと違う」ことがあると猫は戸惑って子猫や飼い主を鳴きながら姿を探したり、食欲や体調が悪くなったりすることもあるとか。猫のそんなその姿が人から見ると
「悲しんでいる」
ように見えるのだそうです。
■母猫とはぐれたときの子猫の気持ちは?
子猫は少しでも母猫から離れると、甲高い声で不安そうに鳴き続けますよね。子猫は鳴くことで、母猫が自分を守ってくれることを本能的に知っているのです。
このときの子猫の感情は、
「寒いよ~」「お腹が空いたよ~」「怖いよ~」という気持ちです。もし人間の子供だったら「母親がいなくて寂しい」と思うところですよね。この時の子猫の気持ちが、人間の感じる
「寂しい」「悲しい」
という感情に一番近いのではと言われています。
■飼い主が他の猫ばかり可愛がっているときの気持ちは?
多頭飼いの飼い主の場合、特定の猫ばかり贔屓して可愛がっていると、猫社会の中でやはり
「嫉妬」「やきもち」
という感情が生まれるそうです。飼い主の不在中に、贔屓された猫は他の猫からいじめられたり村八分にされることもあるとか。
飼い主に可愛がってもらえずに、「悲しい」という感情はありませんが、「羨ましい」というヤキモチの気持ちは持っていると考えられています。
■不妊・去勢手術をしたときの気持ちは?
猫は自分がメスなのかオスなのか、どうすれば赤ちゃんができるのかを知らないといいます。
不妊・去勢手術をしても
「なんだか痛かった。」
と思ってしょんぼりしているだけ。もともと不妊、去勢の意味がわからないため、悲しんでいるわけではないそうです。
■自閉症と動物の情動は似ている
「動物感覚」という本を上梓したテンプル・グランディンは優秀な動物学者ですが、生まれつきの自閉症です。
そんな彼女は、「ネコにフロイトはいらない」と語っています。猫の感情は言葉ではなく映像が母語となっているから、というのがその理由です。
「自閉症と動物の情動は似ている。どちらも羞恥心、罪悪感、決まり悪い、貪欲、妬み、という感情はない」
そうです。猫の感情として絶対にある、と言われる感情は
・怒り
・獲物を追いたくなる衝動
・恐怖
・好奇心
・関心
・期待
の6つ。猫の感情よりも人間の感情の方がとても複雑で多様性があります。猫の気持ちは、深読みせずありのままをみればわかるのかも知れませんね。
■最後に
いかがですか。今回ご紹介した猫の感情。しかしこれは動物学者の見解です。実際に猫と暮らしていると、
「猫だって悲しんでる時がある!」
と思うことはありますよね。私が長時間帰って来ないときのあの表情、絶対に悲しんでいるはず…。
そう信じたいのは飼い主だけでしょうか(泣)
そのほかの猫の感情として、猫には「嬉しい」や「楽しい」感情はもちろんあるはず。
しかし生後2ヶ月まで母猫の愛情を受けて育たなかった子猫は、ほかの動物に愛情が持てない「愛着障害」になると言われています。このだれかを「愛しい」と思う感情は猫にもきっとあるはずですよね。